読了 約12分 日本医師会認定産業医監修

高ストレス者面談の進め方|産業医による事後措置と職場改善まで

この記事のポイント(30秒で読める要約)

高ストレス者は労働者の概ね10〜15%が該当。本人の申し出を起点に産業医面接指導を実施し、通常勤務可・就業制限要・要休業の3区分で意見書を作成。事後措置として労働時間短縮や配置転換を実施します。申し出率向上には、産業医直通の窓口とオンライン面談の活用、集団分析を活かした職場改善が要諦です。

この記事の目次

  1. 高ストレス者の判定基準|厚労省標準モデルと選定数の目安
  2. 本人の申し出から面接指導実施までの実務フロー
  3. 面接指導で産業医が確認するポイントと面談シナリオ
  4. 事後措置の具体例|就業制限・配置転換・労働時間短縮
  5. 個人結果の管理と本人同意の原則
  6. 集団分析の活用と「申し出が出ない」課題の対策

高ストレス者の判定基準|厚労省標準モデルと選定数の目安

ストレスチェックで「高ストレス者」と判定される人は、労働者全体の概ね10〜15%程度になるよう判定基準を設定するのが標準的な設計です。厚生労働省マニュアルが示す標準判定モデルは、職業性ストレス簡易調査票の3領域スコアを用いた2段階判定方式です。

標準的な判定モデル

判定方法1または2のいずれかに該当した労働者を高ストレス者と判定します。具体的な基準値は事業場ごとに衛生委員会で決定可能ですが、厚労省が公開する標準値(例:素点換算表に基づく基準)を採用するケースが多数を占めます。

選定数の目安と判定基準の調整

厚労省は「概ね10%程度を高ストレス者として選定するよう判定基準を設定する」ことを推奨しています。実務上、判定結果が極端に少ない(5%未満)または多い(20%超)場合、基準値を翌年以降に調整することも認められています。

選定割合解釈と対応
5%未満基準が厳しすぎる可能性。集団分析でストレス傾向が出ているなら基準緩和を検討
10〜15%標準的な範囲。原則として継続運用
20%超組織全体のストレス水準が高い可能性。集団分析・職場改善を急ぐ

高ストレス者通知の標準形式

高ストレス者と判定された本人には、結果通知に「医師による面接指導の対象であること」「面接指導を希望する場合の申し出方法」を明記して通知します。多くの企業では、ストレスチェック結果と一緒に面接指導申出書を同送するか、Webシステム上から申し出可能な導線を整えています。

本人の申し出から面接指導実施までの実務フロー

面接指導は本人の申し出により実施するのが原則です。会社側から強制することはできません。標準的な実務フローは以下のとおりです。

標準フロー(5ステップ)

  1. 結果通知:ストレスチェック結果と面接指導申出案内を本人へ通知
  2. 申し出受付:本人から会社へ面接指導申出書(紙または電子フォーム)を提出。申出期限は通知から1ヶ月以内が一般的
  3. 産業医への依頼:会社が産業医へ面接指導を依頼。日程調整を行う
  4. 面接指導の実施:産業医が30〜60分程度の面接指導を実施(オンライン可)
  5. 意見書の交付と事後措置:産業医から会社へ就業上の措置に関する意見書が交付される。会社はその意見を踏まえて事後措置を検討・実施

申し出の心理的ハードルを下げる工夫

「申し出ること自体が会社にバレる」「評価に影響する」と本人が不安を持つと、申し出率は大きく下がります。以下の工夫を入れることで、申し出率を高められます。

申し出が出ない場合の対応

本人が申し出を行わない場合、会社から強制することはできませんが、「ぜひご活用ください」という再案内通知を1〜2回送ることは可能です。何度も執拗に促すことは、本人へのプレッシャーや個人特定リスクを生むため避けます。

面接指導で産業医が確認するポイントと面談シナリオ

高ストレス者面接指導は、医師(産業医)による医学的視点での面談です。診断や治療を行うわけではなく、就業上の措置を検討するための情報収集が主目的です。なお最終的な診断や治療方針は主治医の判断に委ねられます。

面接指導で必ず確認する項目

確認カテゴリ具体的な確認項目
勤務状況労働時間、業務量、業務内容、責任範囲、職場の人間関係
心身の症状睡眠、食欲、頭痛、抑うつ気分、不安、集中力、希死念慮の有無
ストレス要因業務、対人関係、家庭、経済、健康、その他
受診状況主治医の有無、現在の治療内容、服薬状況
本人の希望就業上の配慮、業務量調整、配置転換、相談継続の希望

標準的な面談シナリオ(60分構成)

  1. 導入(5分):面接指導の目的、守秘義務、面談時間の説明
  2. 現状の確認(15分):勤務状況、業務内容、ストレス要因の聞き取り
  3. 心身の症状確認(15分):医学的観点からの状態評価
  4. 本人の希望と目標確認(10分):継続勤務意向、希望する配慮内容
  5. 就業上の措置の検討(10分):本人と一緒に措置案を相談
  6. クロージング(5分):意見書の内容と会社への共有範囲の確認、次回フォロー予定の決定

面接指導の判断軸:3区分の意見書

面接指導の結果、産業医は会社に対して以下の3区分のいずれかに該当する意見書を作成します。

意見書には具体的な措置内容と必要な期間を明記し、会社が対応しやすい形式にすることが実務上重要です。

緊急対応が必要な場合

面接指導中に希死念慮や急性のメンタル症状が確認された場合、産業医は本人の安全確保を最優先します。本人の同意を得つつ、当日中の精神科受診手配、家族への連絡、単独帰宅の回避などを進めます。詳しい初動対応はメンタル不調社員への対応もあわせてご覧ください。

事後措置の具体例|就業制限・配置転換・労働時間短縮

産業医意見書を踏まえて、会社は事後措置を実施します。措置内容は意見書に基づき、本人と相談しながら確定します。

典型的な事後措置パターン

措置パターン具体例期間目安
労働時間短縮残業禁止、深夜業務禁止、所定労働時間の短縮3ヶ月〜6ヶ月
業務量調整担当案件数の削減、業務難易度の段階的調整3ヶ月程度
業務内容変更クライアント対応からバックオフィスへの一時異動など6ヶ月〜
配置転換部署変更、上司変更、勤務地変更恒久的または6ヶ月〜
勤務形態調整リモートワーク許可、フレックス活用、出社頻度調整3ヶ月〜
休業主治医診断書に基づく休職開始個別判断

事後措置を実施する際のチェックリスト

事後措置を怠った場合のリスク

産業医意見書を受領しながら適切な事後措置を取らず、その後にメンタル疾患の発症や労災事案に至った場合、会社の安全配慮義務違反として損害賠償請求のリスクが極めて高まります。意見書の内容を文書化し、措置の検討経緯と実施記録を残すことが、組織防衛の観点でも欠かせません。

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個人結果の管理と本人同意の原則

高ストレス者の個人結果の取り扱いは、本人同意が大原則です。これがストレスチェック制度の最重要ポイントの1つで、誤った運用は労働安全衛生法違反となります。

個人結果の取り扱いルール

誰が個人結果にアクセスできるか

役割アクセス可否
実施者(産業医・保健師など)○ 業務上必要な範囲で可
実施事務従事者(人事権なしの担当者)○ 配布・回収・データ入力など事務作業で可
人事評価権を持つ管理職・人事担当者× 不可
本人の上司× 本人同意なく不可

違反時のリスク

本人同意なく個人結果を閲覧・流用した場合、労働安全衛生法第104条違反として、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金の対象となります。さらに本人からの損害賠償請求のリスクも生じます。

不利益取扱いの禁止

面接指導の申し出をしたこと、または面接指導の結果を理由に、解雇・降格・減給・配置転換などの不利益取扱いをすることは禁止されています。事後措置として実施する就業制限や配置転換は、あくまで本人の健康保護を目的とした医学的措置であり、人事評価上の不利益と区別して取り扱う必要があります。

集団分析の活用と「申し出が出ない」課題の対策

高ストレス者対応の最大の課題は「対象者が申し出を行わないため、面接指導が実施できない」という現実です。実際、高ストレス者と判定されても申し出る人は2〜3割程度にとどまるのが業界平均で、せっかくのストレスチェックが活かしきれていない企業が多数あります。

申し出率を高める3つのアプローチ

個別面接指導が出ない場合の集団的アプローチ

個別の面接指導申し出が低調でも、集団分析を活用した職場改善で組織のストレス水準を下げることは可能です。集団分析は10人以上の単位で実施し、部署別・職位別のストレス傾向を可視化します。

集団分析から職場改善へのつなぎ方

  1. 集団分析結果を衛生委員会で報告
  2. ストレススコアが高い部署を特定
  3. 該当部署のマネージャー・人事でヒアリング
  4. 改善計画の策定(業務量調整、コミュニケーション改善、上司のマネジメント研修など)
  5. 翌年のストレスチェック結果で効果検証

ベンチャーで効果が出やすい組織改善施策

制度設計の見直しタイミング

毎年のストレスチェック実施後、衛生委員会で運用の振り返りと改善議論を行うことを推奨します。判定基準、申し出フロー、結果通知のタイミング、集団分析の単位など、運用の細部を見直すことで、年々制度の効果が高まります。ストレスチェック制度全体の概要はストレスチェック制度とはもあわせてご覧ください。

当社「All in one 産業医」では、月額55,000円〜のプランから、ストレスチェック実施・高ストレス者面接指導・事後措置・集団分析・職場改善まで一気通貫でサポートしています。「面接指導の申し出率が低くて困っている」「集団分析を職場改善に活かしきれていない」という企業様は、ぜひ無料相談をご利用ください。

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よくある質問

Q. 高ストレス者と判定された人全員に面接指導を実施するのですか?
A. いいえ、面接指導は本人の申し出により実施するのが原則で、強制はできません。実態として申し出る人は2〜3割にとどまるため、申し出窓口の心理的ハードル低減と事前周知が重要です。
Q. 面接指導を申し出たことで人事評価に不利益はありますか?
A. 申し出や面接指導の結果を理由に解雇・降格・減給・配置転換などの不利益取扱いをすることは法令で禁止されています。
Q. オンラインでも面接指導は可能ですか?
A. はい、オンライン面接指導は厚労省も認めています。リモートワーク中心の組織では特に効果が高く、対面の心理的負担を下げられるため申し出率向上にもつながります。
Q. 申し出が出ない場合、会社として何ができますか?
A. 個別の面接指導が実施できなくても、集団分析を活用した職場改善で組織のストレス水準を下げることは可能です。部署別のストレス傾向を可視化し、業務量調整・1on1の質改善・上司マネジメント研修などにつなげます。

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