規模別の月額早見表(50/100/200/300/500/1000名)
結論から書きます。産業医費用は従業員数・業務範囲・訪問頻度・紹介料の有無の4つで決まります。まずは規模別の月額相場を一覧で押さえてください。当社のシード〜IPO期100社以上の導入実績から、業界相場の中央値と最安値を整理しました。
規模別 月額費用早見表(2026年版)
| 従業員数 | 業界相場(中央値) | 最安値水準 | 主な業務範囲 |
|---|---|---|---|
| 50名 | 5万〜8万円 | 5.5万円〜 | 嘱託(月1回訪問・委員会・面談) |
| 100名 | 7万〜12万円 | 5.5万円〜 | 嘱託(月1回訪問・委員会・面談・健診事後措置) |
| 200名 | 10万〜18万円 | 8万円〜 | 嘱託(月1〜2回訪問・メンタル対応含む) |
| 300名 | 13万〜22万円 | 10万円〜 | 嘱託(月2回訪問・Slack即時相談・休復職支援) |
| 500名 | 18万〜30万円 | 15万円〜 | 嘱託(週1回訪問・メンタル対応・IPO対応) |
| 1,000名 | 30万〜50万円 | 25万円〜 | 嘱託(週1〜2回訪問)+専属化準備 |
1,000名以上の事業場は専属産業医(フルタイム)選任が法定義務になり、人件費は年800〜1,500万円規模となります。本記事では1,000名未満の嘱託契約を中心に解説します。
表の読み方とベンチャーの位置づけ
業界相場の中央値は、紹介サービスを介した契約・訪問頻度月1〜2回・標準的な業務範囲を前提にしています。シード〜シリーズBの50〜200名規模では、月額5〜10万円のライトプランから始めて、組織拡大に応じて業務範囲を拡張していくのが資本効率の高い使い方です。
業務範囲別の上下幅と、何が含まれるか
同じ「100名規模・月7万円」でも、業務範囲によって含まれる内容は大きく異なります。業界相場の上下幅3〜5万円分の差は、業務範囲の差と理解してください。
業務範囲のレイヤー別整理
| レイヤー | 含まれる業務 | 追加費用の目安 |
|---|---|---|
| レベル1: 法令最小 | 月1回職場巡視・衛生委員会出席・健診事後措置・労基署提出書類サポート | ベースライン |
| レベル2: 標準 | レベル1+ 産業医面談(月数件まで)・健康相談 | +1〜2万円/月 |
| レベル3: メンタル対応 | レベル2+ 高ストレス者面接指導・休復職判定・主治医意見書対応 | +2〜4万円/月 |
| レベル4: 即時相談 | レベル3+ Slack/chatworkでの平日日中相談 | +1〜2万円/月 |
| レベル5: フルカバー | レベル4+ 英語対応・IPO規程整備支援・労務DD対応 | +3〜5万円/月 |
ベンチャーで起こりがちな失敗は、レベル1の最安プランで契約した後に「メンタル不調者の対応をお願いしたい」と追加依頼を出し、毎月のスポット費用が嵩んで結局レベル3より高くつくケースです。初期契約時に「3〜6ヶ月以内に追加が見込まれる業務」を予測して、契約レベルを1段階上げておくのが結果的に安く収まります。
「嘱託契約」に含まれない業務の代表例
- 休職診断書の発行(産業医は原則として診療行為を行わないため、診断書は主治医の領域)
- 診療・処方(産業医の業務範囲外)
- 個別の生活習慣指導の継続フォロー(健康保険組合の保健指導や外部EAPの領域)
訪問頻度・オプションが費用に与える影響
訪問頻度とオプションは、費用変動の主要因です。50名規模なら月1回未満でも法令上問題ない一方、500名規模では月2回以上が現実的になります。
訪問頻度別の費用差
| 訪問頻度 | 追加費用(50〜200名規模) | 適性企業 |
|---|---|---|
| 月1回(標準) | ベースライン | 50〜300名規模、メンタルリスク標準 |
| 月2回 | +2〜4万円/月 | 200〜500名規模、メンタル相談多発期 |
| 週1回 | +5〜8万円/月 | 500名以上、または面接指導が常態化 |
| オンライン併用 | -1〜3万円/月(現地頻度を減らせるため) | 地方拠点中心、リモート組織 |
ハイブリッド運用(月1回現地+月1〜2回オンライン面談)は、現地訪問費を抑えつつ対応スピードを上げる定番パターンです。当社では事業場の所在地と従業員分布を踏まえてハイブリッド構成を設計しています。
主要オプションの追加コスト
- Slack/chatwork即時相談: 月1〜2万円
- 英語対応(英語面談・英語意見書): 月2〜3万円
- IPO規程整備支援: 月3〜5万円(プロジェクトベースで個別見積もりも可)
- 労務DD想定問答対応: 月2〜4万円
- EAP連携(外部カウンセリング窓口): 月1〜3万円
- 復職判定会議出席: 月1〜2万円(発生時のみスポット課金もあり)
これらすべてを盛り込むと、100名規模でも月15〜20万円のフルカバー契約になります。必要なオプションを業務範囲別に取捨選択するのが費用最適化の本質です。
紹介料の有無と、年間総コストのリアル試算
多くの企業が見落としているのが「紹介料・仲介料」の存在です。大手紹介会社経由の場合、医師に支払われる手取り報酬とは別に、契約月額の20〜30%が紹介料として請求書に上乗せされていることがあります。
紹介料の有無で起きる年間コスト差(100名規模・月10万円契約の場合)
| 項目 | 紹介会社経由 | 直接契約型 |
|---|---|---|
| 月額表記 | 10万円 | 10万円 |
| うち紹介料(20%想定) | 2万円/月 | 0円 |
| 医師への実報酬 | 8万円 | 10万円(同額で交渉力高) |
| 年間総額 | 120万円 | 96万円(同等業務で20%減) |
| または同予算で得られる業務範囲 | レベル2相当 | レベル3+α相当 |
同じ100万円台の予算でも、直接契約型は紹介料が発生しないため年間20〜30万円の差になります。さらに、医師への実報酬が高い分、対応スピードや積極性で差が出やすい構造でもあります。
年間総コストには旅費・交通費も含めて見る
地方拠点を持つ企業では、訪問1回あたり1〜3万円の交通費実費が請求されるケースが珍しくありません。月1回訪問なら年12〜36万円、月2回訪問なら年24〜72万円が交通費として上乗せされます。
- 東京から大阪・名古屋: 新幹線往復+宿泊で1.5〜3万円/回
- 東京から札幌・福岡: 航空券+宿泊で2〜4万円/回
- 本社近郊の都内移動: 数千円/回(タクシー含む)
オンライン対応を組み合わせて現地訪問頻度を最適化することで、この旅費を年10〜30万円規模で削減できます。「産業医の契約形態と料金内訳」では契約書の交通費条項のチェックポイントも解説しています。
規模拡大期の予算計画と、削れる/削れないコスト
50→300名の成長企業 3年間の予算推移シミュレーション
| 年度 | 従業員数 | 月額 | 年間 | 3年累計 |
|---|---|---|---|---|
| 1年目 | 50名(契約開始) | 5.5万円 | 66万円 | 66万円 |
| 2年目 | 150名(中盤) | 10万円 | 120万円 | 186万円 |
| 3年目 | 300名(IPO準備期) | 15万円 | 180万円 | 366万円 |
3年間で従業員数が6倍に増えた場合、産業医予算は約3倍。固定費としては予測しやすい部類で、CFOへの予算稟議でも「人員増に対して比例的だが線形以下に収まる」という説明で通りやすい支出です。
削れるコストと削れないコスト
- 削れるコスト: 紹介料、過剰な訪問頻度(月1回で足りるところを月2回にしている)、使われていないオプション(Slack相談を契約しているが運用フローがなく利用率0%など)、地方拠点への現地訪問頻度
- 削れないコスト: 法令で最低限求められる職場巡視・衛生委員会・健診事後措置、メンタル不調者発生時の対応工数、IPO審査前のN-2期に必要な体制整備支援
とくにIPO準備期に入ってからの体制整備は、後ろ倒しほどコストが膨らむ傾向があります。N-2期(上場2期前)に入る前に体制を整え、N-1期は運用実績を積む時間に充てるのが理想的なスケジュールです。
業界平均との比較で予算妥当性をチェック
従業員1人あたりの月間産業医費用は、業界相場で500〜1,500円/人のレンジに収まります。これを大きく超える契約は、業務範囲の重複や使われていないオプションが含まれている可能性があり、年1回の契約見直しで適正化できます。
月額55,000円〜のライトプランで何ができるか
当社「All in one 産業医」では、シード〜シリーズB期のベンチャー向けに月額55,000円〜のライトプランを提供しています。具体的に何が含まれ、どこで物足りなくなるかを正直に整理します。
ライトプランに含まれる業務
- 月1回の職場巡視(現地またはオンライン併用)
- 月1回の衛生委員会出席(オンライン可)
- 定期健康診断結果のチェックと事後措置の助言
- 労基署提出書類のサポート(産業医選任報告・衛生管理者選任報告など)
- 健康相談・産業医面談(月数件までの目安)
ライトプランで物足りなくなるケース
- 毎月のメンタル不調者対応が常態化(月3件以上の面接指導が発生)
- Slack/chatworkでの即時相談が必要な組織文化
- 外国籍社員が多く、英語対応が必要
- IPO準備で規程整備支援や労務DD対応が必要
これらに該当する場合は、スタンダードプランまたはIPO対応プラン(個別見積)へのアップグレードを推奨します。詳細は料金プランページをご覧ください。
規模・フェーズ別のおすすめプラン早見
- シード〜シリーズA(30〜80名): ライトプラン(月55,000円〜)
- シリーズB〜C(80〜200名): スタンダードプラン
- プレIPO(200〜500名): IPO対応プラン
- 上場後(500名〜): IPO対応プラン+専属化検討開始
最適なプラン選定の判断軸は「ベンチャー・スタートアップが選ぶべき産業医の条件」でも詳しく解説しています。あわせて読んでおくと、契約交渉での質問の質が上がります。