産業医の契約形態は3種類|嘱託・スポット・専属
産業医の契約形態は、大きく分けて嘱託契約・スポット契約・専属契約の3種類があります。ベンチャー・スタートアップが最初に検討すべきは「嘱託」と「スポット」の使い分けです。専属は従業員1,000人以上の事業場で法律上義務化される選択肢で、まずは選択肢の全体像を整理しましょう。
| 契約形態 | 頻度 | 費用感 | 向いている企業 |
|---|---|---|---|
| 嘱託(顧問)契約 | 月1回〜週1回 | 月額3万〜15万円 | 50〜500名の中小・ベンチャー |
| スポット契約 | 必要時のみ単発 | 1回3万〜10万円 | 面談・休復職判定の単発依頼 |
| 専属契約 | フルタイム常駐 | 年800万〜1,500万円 | 1,000名以上の大規模事業場 |
嘱託契約は「月額固定」で予算管理がしやすい
嘱託契約は、月額固定で定期訪問・面談・衛生委員会出席までをパッケージ化したもの。中小・ベンチャー企業のほぼすべてが嘱託契約を選択しています。月額固定なので、人事部の年度予算に組み込みやすいのが大きなメリットです。
スポット契約は「年に数回」の企業向け
スポット契約は、ストレスチェック後の高ストレス者面談だけ、休復職判定だけ、といったピンポイント依頼に向いています。年間トータル費用は嘱託より安く済むケースもありますが、医師が企業文化を理解しないまま単発対応するため、緊急時の即応が難しいのが弱点です。
専属契約は1,000名超で義務化
労働安全衛生規則第13条第1項3号により、常時1,000人以上の労働者を使用する事業場(一定の有害業務がある場合は500人以上)は、その事業場に専属の産業医を選任しなければなりません。専属はフルタイム雇用(または専属契約)になるため、年収ベースで800万〜1,500万円規模となります。詳細な費用相場もあわせてご確認ください。
月額契約の料金内訳|基本料金・訪問費・オプションの分解
「月額〇〇円」と提示されても、実は内訳によって割安・割高が分かれます。契約前に必ず内訳を確認してください。
料金構造の3要素
- 基本料金:月次の業務管理費・労務管理ツール利用料・健康情報の管理費など固定で発生する金額
- 訪問費(または交通費):医師の現地訪問にかかる費用。月1回でいくら、月2回で追加いくらと加算される構造
- オプション:ストレスチェック実施、メンタル面談、復職判定、健康教育セミナー、緊急対応(24時間チャット)など
「月額〇万円」だけを見ない
例えば「月額3万円」を提示されても、訪問費別途・面談1回ごとに3万円・衛生委員会出席別料金、というケースがあります。その場合、年間総額は120万〜180万円に膨らみ、結果的にオールインワン型の「月額7〜8万円」より割高になることも。
料金内訳のチェック項目
- 月次の定期訪問は基本料金に含まれるか、別途請求か
- 衛生委員会の出席は何回まで月額に含まれるか
- ストレスチェック実施業務(実施者報酬)の有無
- 面談1回あたりの追加費用
- 面接指導意見書の作成費の有無
- 休復職判定の追加料金
- 労基署提出書類のサポート範囲
- SlackやChatwork等での日常コミュニケーション可否と料金
訪問頻度の選び方|月1回・月2回・週1回の判断軸
訪問頻度は費用に直結するので、企業規模・課題に応じて適切に選択してください。
月1回(最頻パターン)
50〜200名規模のほとんどの企業が選択する標準パターン。月1回の訪問で職場巡視・衛生委員会出席・面談(1〜3件)をまとめて実施します。月額目安は5万〜8万円。
月2回
200〜500名規模、もしくはメンタル不調者が複数いる企業で選ばれます。1回目を「巡視+委員会+面談」、2回目を「面談・健康相談」に充てるパターンが多く、月額目安は8万〜12万円。
週1回
500名超の事業場、または健康課題が多い業種(飲食・物流・コールセンターなど)で選ばれます。半専属に近い形になり、月額目安は15万〜25万円。
50人未満は「月1回未満」も可能
50人未満の事業場では産業医選任義務がないため、訪問頻度に法令上の縛りはありません。隔月訪問・四半期訪問という運用もあり、月額3〜5万円のライトプランで対応できます。50人を超える前のチェックリストもあわせてご確認ください。
オンラインのみ/対面ありの違いと費用差
2020年以降、産業医面談・健康相談のオンライン化が一気に進みました。コスト・働き方の両面で大きな選択ポイントです。
オンライン対応のメリット
- 移動時間・交通費が不要なため、月額費用が1〜2万円安くなる傾向
- 地方拠点・リモートワーク社員も同条件で面談可能
- 予約から面談までのリードタイムが短い(即日〜翌日対応も)
- 医師側の稼働効率が上がるため、対応可能人数が増える
対面(訪問)が必要な場面
- 職場巡視:原則として現地訪問が必要(オンライン代替は限定的)
- 衛生委員会:オンライン参加可だが、初回・四半期に1回など対面を組み合わせると関係構築に有利
- 重度メンタル不調者の初回面談:ノンバーバルな観察が必要なケース
ハイブリッド運用が現実的
「巡視と委員会は四半期に1回対面、それ以外はオンライン」というハイブリッド運用が、コスト・運用品質のバランスで多く選ばれています。完全オンラインも可能ですが、職場巡視の代替方法(写真・動画・衛生管理者からの月次レポート)を契約時に取り決めておく必要があります。
紹介料・契約期間・解約条件で見落としがちな落とし穴
紹介料の上乗せ(月額の20〜30%)
大手紹介会社経由で産業医を契約すると、月額料金の20〜30%が紹介料として上乗せされていることがあります。これは契約時には見えにくく、医師側に支払われる報酬と企業が支払う総額に大きな乖離が生まれる構造です。
当社のように、自社内の認定産業医が直接対応するサービスでは紹介料・仲介料がゼロ。同じ業務範囲でも月額数万円の差が出るため、複数社の見積もりで「紹介料の有無」を必ず確認してください。
契約期間と最低契約期間
多くのサービスでは初回6か月〜12か月の最低契約期間が設定されています。途中解約には違約金が発生することがあるため、「使ってみて合わなかったら切り替える」という前提で契約する場合は、最低契約期間と違約金条項を確認しましょう。
解約条件と通知期間
- 解約通知期間:1〜3か月前通知が一般的
- 違約金:最低契約期間内の解約で残月分相当が発生するケースあり
- 労基署届出の取下げ:選任報告の取下げを企業側で実施する必要あり
意見書・記録の引き継ぎ
解約時に、これまでの面接指導意見書・産業医意見書・衛生委員会議事録・健康情報の引き継ぎ条件を確認してください。次の産業医に円滑に情報を引き継げないと、休復職中の社員対応が宙に浮きます。
切り替え時の引き継ぎ|失敗しない3つのチェックポイント
「いまの産業医に不満がある」「料金が割高に感じる」など、切り替えを検討する企業は珍しくありません。スムーズに切り替えるための実務ポイントを整理します。
1. 切り替え前1〜2か月で並行期間を設ける
旧産業医との契約終了月と、新産業医との契約開始月を1か月重ねるのが理想です。並行期間中に職場巡視同行・健康情報の受け渡し・休復職中社員の引き継ぎ面談を行うと、現場の混乱を最小化できます。
2. 健康情報の移管手続きを明文化する
健康情報は個人情報保護法上の「要配慮個人情報」です。新産業医への移管は、本人同意の取得・健康情報取扱規程に沿った手続きが必要となります。書面ベースで「何を・誰に・いつ移管するか」を残しましょう。
3. 労基署への変更届出
産業医を変更した場合、変更後14日以内に「産業医選任報告」を所轄労基署へ再提出します。新産業医の医師免許番号・産業医資格・所属先を記載した報告書を準備してください。
切り替え時の費用シミュレーション
切り替え後の月額が下がっても、初期費用や引き継ぎ費用が発生する場合があります。年間トータルで見たときに本当にコスト削減になるか、12か月単位でシミュレーションしてから判断しましょう。料金プランページで当社の料金体系を確認いただけます。